2011.12.11(sun)

先週日曜に引き続き、昨日もギャラリー巡りをしてきました。

クリスマスや年末も近いこの時期、人出を見込んで各ギャラリーともこぞっていい展示をしております。特に印象深かったのは銀座・光画廊で開催中の「高堀正俊展」と、日本橋・ギャラリーショウの「伊東明日香×イトウアスカ展」。

 

まずは「高堀正俊展」。彼は私の武蔵美の後輩でもあり、職場の元後輩でもある男で、現在は新制作協会会員で絵画教室講師という肩書の持ち主。今年6月に武蔵美の展示スペースg FALで個展も開催しています。

 今回の展示は15号以内の油彩画が中心でしたが、人物・静物・風景とモチーフも多彩で、白亜下地の支持体に墨や鉛筆で描いたものやドローイング調の作品などもあって、バラエティー溢れる見応え充分の内容でした。

会期最終日でしたが当の本人が不在のため残念ながらお会いすることは出来ませんでしたが、画廊のオーナーと、とある作家の方が何やらきわどい内容の話。今の写実はどうのこうのとか、名前が知られていないと売れないとか、相変わらず古典的な話題ではありましたが、話の中の登場人物が私の知り合いばかりでしたので、別の意味で楽しまさせてもらいました。狭い画廊の中でのゴシップ話は禁物ですね。いい教訓になりました。笑

 

そして「伊東明日香×イトウアスカ展」。この作家は私には初見の方でしたが、facebookで友人登録しているギャラリーショウのイベント紹介で興味を持ち足を運んでみました。

ビルのB1に陣取ったギャラリーは、入口のドアを開けた瞬間からなにやら怪しげな雰囲気。真っ白い下り階段には真っ赤な薔薇の花びら(作りもの?)が散りばめてあり、階段を下り切った壁にはモノクロで描かれたセルフポートレート(少女期の自画像)が掛けてある。そしてメインの展示ルームには主に油彩で描かれた平面作品が数点。床面にはやはり薔薇の花びら。平面作品に描かれているのは自身をモデルとしたかなりきわどいセミヌード。これが看護師系やメイド系のいわゆる俗っぽいコスプレ姿なのだが、不思議なことに下品さがなく素直に美しい。もっと言うと気品さえ感じられるではないか・・・。そしてもっと驚いたのはメインルームの一角で作家自身がさりげなくドローイングをしているのである。ドローイング自体は日常的なパーツをモチーフに描いてるだけのさほど面白いものではないのだが、自身の欲望を曝け出した作品が並ぶ会場に当の本人が居て、観に来た我々に話しかけながらドローイングするというパフォーマンスには驚嘆してしまいました。これは、この展覧会のタイトルでもある「伊東明日香×イトウアスカ」の一人二役、すなわち2人展とも言うべき演出であって、そのコントラスがもたらす効果に観賞者である我々が混乱しつつも女性の欲望の深さを思い知る、ということなのでしょう。

以下に作家が書いたキャプションを全文で紹介します。

 

「性欲を解放し、愛と快楽を堪能する。女性は美しくなり、自信に満ちあふれていくだろう。男性に服従しながら支配する日々。愛される喜び、愛を放出する快楽。恥じらいの中にある心地良さ。正しい性の在り方なんて誰も教えてくれない。きっと答えはひとりひとりの中で生みだすもの。ある日、日常の自分を脱ぎ捨て、自分の感じるがままに変貌してみた。何度も変容を重ねていくうちに、表情や心境が変わっていくことに心地良さを憶える。ファンタスティックな世界に生きている。そして、この姿や快楽を誰かに伝えたいという気持ちが込み上げてくる。しかし、私は堂々と他人にみせることが出来ないのである。だから私は作品の中で解放していく。」

“欲望という名のワタシ”と銘打ったこの展覧会、今までにない新鮮さと奥行きを感じるいい内容でした。

 

そしてそして、昨夜は皆既月食。ピンク・フロイドの「The Dark Side of the Moon」を聴きながらその時間を過ごす。人間内部に潜むであろう“狂気”を、きわどく描き出すという、ロジャー・ウォーターズのコンセプトで作られたこのアルバムは、発表から38年も経つというのに少しも色褪せることはありません。

 

かくして、3つのきわどさを一日で体感した私でありました。笑  


   

2011.11.27(sun)

11/19(土)~21(月)の3日間、実家の福島市へ帰郷。

19日朝930頃に車で出発。途中、私が主宰する絵画教室の展覧会を観てから大泉ジャンクションへ向かったためか東北道へ入ったのは結局1130過ぎ。結構な人出ではありましたが流れはスムーズ。途中2回の休憩をはさんで1530頃に実家へ到着。私の帰りを待ち構えていた母親と早速談笑。夕飯にはお土産の宇都宮餃子で一杯。久々の実家でゆっくりとくつろぎました。

 

20日は被災地「相馬」へ行く。

実は3.11の震災以降、福島市へは2度行きましたが、津波の被害がひどかった沿岸部にはまだ一度も行ったことがありませんでした。

1000少し前に車で相馬へ向かう。国道115号線を走ると全国ニュースにもなった大波地区(放射能による米の出荷停止)が見えてくる。晩秋ののどかな里山風景。日本の何処にでもあるこの風景の中に基準値を超える放射能があるなんてとても信じられない。

115号線の標識にはすっかり有名になってしまった「飯館村」や「川俣町」の文字が見える。BGM が悪かったのか、色んな想いが交錯してしまい泣きながら車を走らせる。

1時間で相馬市街へ到着。そして市街地から程近い岩子漁港を皮切りに、相馬港、新地町と大きな被害を受けた地区を車でゆっくりと巡ってみる。8ヶ月以上も経つというのにこの惨状、本当に言葉にならない。身体は震え自然と涙がこぼれ落ちる。

一通り見回った後は、学生時代に一緒にグループ展などをして親交が深かった相馬市在住の友人と会う。10数年ぶりの再会だっただけに感慨もひとしお。仕事や子育て、作品制作、震災に至るまで、色んな話題を奥さん(奥さんとも知り合いなんです)を交えてかなり盛り上がりました。なので、惨状を目の当たりにして沈んでいた気持ちも少し救われる。

相馬から戻ってきて、夜は中学時代の旧友達と懇親会。今年4月に30数年ぶりに再会した2人でしたが、また今回も話しても話しても話は尽きず、本当に楽しい時間を過ごさせてもらいました。

 

21日は朝900過ぎに父親の見舞いに行く。脳出血で倒れてから早いもので丸6年。左半身が不自由なものの幸い意識はしっかりしている。食欲もあり元気そうだったのでひと安心。

それよりも昨夜から母親の体調が悪く、近所のかかりつけの医者から紹介状をもらって日赤病院へ連れていく。月曜日のためか病院は大混雑。血液やCT等の検査を経てようやく診察。大事に至るような病状ではないようなのでこちらもひと安心。

しかし考えてみると両親ともかなりの高齢。親不孝ばかりしている私に愚痴一つ言わない。病院の待合室で不安気な顔で私の横顔をちらちらと見つめる母親の姿が今も頭から離れません。

病院から戻って約束していた昼食会へ。この昼食会はマイミクのなぎぃさんが企画してくれたもので、小・中学時代の同級生女子4人との楽しい食事会(まあ傍から見れば、女子会+おじさん1名という感じですかね。笑)です。民家を改装した洒落たお店で、イケメンのオーナーが作るカレーを食しながら懐かしい話でおおいに盛り上がりました。ホントあっという間に2時間半が過ぎてしまいました。

その後実家に戻ってから東京への帰路へ。夕刻の高速を走りながら、色々あり過ぎた福島での3日間を振り返りまた感懐に耽ってしまいました。


土佐久礼の大正市場
土佐久礼の大正市場

 

2011.11.11(fri)

11/46の日程で定番の高知出張へ行ってきました。

もう数えきれないほど(ちょっと大袈裟)行ってるのにいつも楽しい。

しかもどんどん楽しさが増していくから不思議。笑

 

高知入りした4日の晩は、かねてから行ってみたいと思っていた居酒屋「花鳥風月」へ。店は小ぢんまりとまとまっていて雰囲気もグッド。何よりお目当ての料理も旨い。特にカツオの塩タタキとムカゴの天ぷらが美味でした。

いやいやしかし、初日というのにあまりにも飛ばし過ぎてしまい翌朝はかなりの二日酔いに。泣

facebookを肴に飲ってたら焼酎1本空いてました。これがマズかったなぁ。反省反省。笑

その後はお決まりのウォルトンバーへ。ここでも赤ワイン1本を空けてしまう。もう完全に酔っぱらってるはずなのにワインの味が美味しく感じるから恐ろしい。

 

翌朝は予定していた土佐久礼の「大正市場」へ行く。

ひどい二日酔いと生憎の雨の中、レンタカーを借りて市場へ向かう。運転手は私ではなく同僚のIさん。ほぼ同じ量を飲まれははずなのに二日酔い無しとはさすが。

車中、持参した「柳ジョージとレイニーウッド」のCDをかけて土佐の殿様“山内容堂”をテーマにした「酔って候」を聴く。先月亡くなったジョーちゃんを偲ぶのに、是非とも高知で聴きたかった曲なのでホント感無量。

 

大正市場へ到着したら早速朝ごはんを食べに田中鮮魚店へ。ここへはこの夏にカミさんとメジカの刺身を食べに来ましたが、魚がとにかく新鮮で美味しい。

二日酔いの私にはちょっと厳しい「カツオのタタキ定食」でしたが、タタキもみそ汁も最高に旨い。結局完食でした。笑

その後大正市場から程近い中土佐町立美術館で高知学芸高校美術部員達による作品展を観覧し、地元のお土産をいくつか購入してから次の目的地へ。

 

土佐久礼から高知方面へ引き返して今度は香美市立美術館へ行く。ここでは彫刻家の「舟越桂展」を開催中。作品数も多く見応え十分のいい展示でした。

 

香美市立美術館を出ると11月というのに激しい雨。そんな雨の中をレンタカーを走らせて、今回のメインの仕事である講習会会場の高知学芸高校へ。

1日半の短い実技講習会でしたが、参加した生徒達全員なかなかいい内容の作品が仕上がったと思います。

結局、5、6の晩も4日の二日酔いは何処へやらの痛飲。仕事に展覧会にと公私に渡る仲間達と大いに盛り上がりました。

   


柳ジョージ&RAINY WOOD
柳ジョージ&RAINY WOOD

 

2011.10.15(sun)  

また一人、思い出深い大切な人が逝ってしまった・・・柳ジョージ。

 

その出会いは私がまだ高校生の頃。

「赤いキャンディ包んでくれたのは、古いニュースペーパー」 ~青い目のステラ~

「土佐の鯨は大トラで、腕と度胸の男伊達、いつでも酔って候」 ~酔って候~

 

当時、ロック小僧で洋楽中心だった私に、骨太の和製ブルースを聴かせてくれた。

「ヘイ、ダーリン、please don’t you cry 寂しい顔はよせよ」 ~ヘイ・ダーリン~

「そこにお前がベイビー、居るだけで悲しみは消えてゆく」 ~「祭ばやしが聞こえる」のテーマ~

 

暗く切ない浪人時代を支えてくれた。

Smile on Me Smile on Me Smile on Me 微笑みは目元を走る」 ~微笑の法則・Smile on Me

「俺がいつか死んだら、亡骸を小さな船に乗せて、生まれたこの街の港から沖に流してくれ」 ~遺言~

 

本場のブルースにのめり込むキッカケを作ってくれた。

「石畳の坂を登れば、海の見える丘に出た。防波堤にあたる波間に、俺を呼ぶ声が聞こえた」 ~FENCEの向こうのアメリカ~

I was dancing with my darling to the Tennessee Waltz」 ~テネシーワルツ~

 

そしていつしかあなたの歌が聴こえなくなった。

 

あのしゃがれた声でもう一度歌って欲しい。

「こぼれ落ちた夜を拾い集めて、明けゆく空に放り投げ、ゆうべの酒に泳ぐ酔いどれは、水溜りの向こうも見えない・・・」 ~プリズナー~

   

63歳で逝ってしまうなんて・・・神様も酷いよ。

 

我が青春の1ページ。ありがとう、ジョーちゃん。